■母の家


田舎での一人暮らしが厳しくなってきた母を東京に呼び寄せるための住まいである。
築20年のマンションを老いた母を介護するために全面リフォームした。
近所に私の家族と妹家族も住んでいるので、子供達が交代で泊まりに来る。介護のために義務としてくるのではなく、子供や孫達が集まりたくなるよう住まいにすることを考えた。定住者は一人だが、子供達の家族が夕食はここでとる。記念日などには複数の家族がワイワイガヤガヤするための場所でもある。
母は最晩年の12年間をここで暮らした。次は私がここで暮らす番になろうとしている。

居間・廊下・寝室の床仕上げは畳である。畳にしたのは転んだときに備えてのクッション性、車いすの走行性、汚れても部分的に取り替えられること、居間を大広間的に使うことや、布団を敷いて一部を寝室ゾーンとして利用することなどを想定したからである。
食卓の下や水回りは、24mm厚の秋田杉。床を無垢材にする場合、階下への遮音対策が重要である。グラスウールボードを全面に敷き込み、乾式浮き床構法とした。

■間取りの変更
元のプランは3LDKで小さな個室が窓際に並び、残ったスペースを居間食堂台所に割り振ったものだった。
個室を減らし、台所の位置を変え、給排水経路を壁際に整理して、浴室以外はすべて床がフラットになるようにした。
プランを変えたことで、玄関ドアを開けると視線が居間を抜けて外の緑がと空が見える。
落ち着きと広がりが感じられる場所になった。
開口部の位置は変更できなくても、できるだけ自然光で過ごせるように計画した。

■寝室
一時期、ベッド脇にポータブルトイレが必要になり、畳を同じ厚みのシナ合板に入れ替えた。
部分的に床仕上げを変更できることも、畳の利点である。
壁と天井は、調湿プラスターボード下地手漉き和紙貼り。

フルユニットバスをハーフユニットに取り替え、壁と天井はヒノキにした。
吸引だけではなく、空気を循環できるタイプの換気扇を取り付けたおかげで、改装後12年経ってもカビとは無縁である。

■図面(クリックで拡大表示)