F.LL.Wright の住宅

第7回 Pew邸 1938年 ~2階建てのユーソニアンハウス~


Pew邸は森に囲まれた湖岸の斜面に建っています。敷地幅が限られていたためユーソニアンハウスでは数少ない2階建です。斜面に石積みの基部を造り木造部分を湖側にはり出させて眺望とプライバシーを確保しています。湖畔の外周道路から湖に向かってアプローチを下り、湖をちらっと見て家に入ります。
玄関に入ると大きなテラスに面した居間が見えます。開口部は天井まで大きく開けられ、大きなテラスに出ると湖が望めます。木々に囲まれ近くにあるはずの隣家には気がつきません。


入り口からの居間をみる。左手のテラスからメンドータ湖が見下ろせる。


居間の中央部は、天井が一段高く大きな石積みの暖炉のある落ち着くスペースです。右側に回り込むとダイニングコーナー、さらに右に回るとキッチンがあり玄関につながります。ぐるっと一廻りできる実用的で使いやすいプランです。壁と天井はサイプレス(糸杉材)、暖炉はライムストーン(石灰石)です。自然素材は経年変化によって風合いが増し、古びたみすぼらしさが全くありません。

 
暖炉の右が玄関、左がダイニングコーナー。暖炉の裏側に階段とキッチンがある。


玄関から暖炉とキッチンに挟まれた階段を降りるとボイラー室と洗濯室。反対のダイニング側から階段を上がると3寝室とバスルームがあります。この家が設計されたのは昭和15年。80年も前ですが、現在でもそのまま通用する時代を先取りした平面計画ですね。
施工はタリアセンフェローシップによる直営工事です。監督にあったったのは、W.ピータース。タリアセンの学生でした。まだ経験も少なく予算的にもかなり苦労したようです。彼はライトの後を引き継いでタリアセンのリーダーになりました。


平面図


右写真/玄関から見たキッチンとダイニング。座っていいるのはPew婦人
左写真/Pew夫妻と若かりし頃の私

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  『住まいマガジン びお』にて連載中。