F.LL.Wright の住宅


第16回 H.Prince邸 1954年  ~荒野のブロック住宅~

Price邸はアリゾナ州にあるタリアセンウエストの近く、サボテンがニョキニョキ生える荒野に建つ別荘です。コンクリートブロックや木毛板等、安価で荒々しい素材でできています。荒野の風景に合わせて選ばれたのでしょう。
居間食堂のウイングと寝室ウイングが屋根付きの半戸外(アトリウム)でつながる細長いプランです。

荒野に向かって開いたアトリウム、屋根付きの半戸外です。中央には噴水。
大きな建具は、ガラガラヘビやコヨーテの進入を防ぐためでもあります。
建具に描かれた抽象画は、ライトの親指と呼ばれた一人、ジーン・メスリンクによるもの。

アトリウムにつながるリビングルーム。天井は木毛板とフラットバー、工場か倉庫のような素材です。上に広がるブロック積みの柱から細い鉄柱で屋根を浮かし、囲われていながら戸外のような広がり感のある空間です。

ライトデザインのハイバックチェアーが並ぶダイニングコーナー。安価な素材に囲まれているにもかかわらず格式の高さを感じます。暖炉の裏側がキッチンです。

居間とは逆に上部が小さくなるようにずらして積まれたキッチンのブロック壁。
照明のスイッチが埋め込まれています。

寝室
天井の素材は同じですが、壁は板張り。居間とは全く異なる雰囲気です。気持ちが落ち着き安心感を醸し出しています。開口部につけられた折り戸が、アリゾナの強烈な日差しを調節します。

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 『住まいマガジン びお』にて連載中。