F.LL.Wright の住宅

■第3回 共同生活から建築を学ぶ

 私が在籍当時タリアセンは、ライトの家族、スタッフとその家族、学生たち総勢70人が共同生活をしていました。掃除や食事作りなど全ての家事を交代で行います。キッチンは製図室とドア一枚の隣にあり、スタッフと学生の3人で70人分の食事(3食+午前と午後の2回のおやつ、計5食/1日)を作ります。キッチン当番は、朝から晩までのきつい仕事なので、キッチンの一週間は、製図室の仕事は免除されていました。ダイニング当番は、テーブルの配置を換え、テーブルクロスの色を選び、花を生けることが仕事でした。全員が調理やおもてなし方を体験するのです。“体験が、リアリティのある提案を生む!”とのライトの考え方です。


料理は当番制、スタッフ・学生分け隔てなく全員に廻ってくる。

 
担当は、必ず模様替えをしなければならない。


学生たちの住まいはテントです。ライトがアリゾナの地に住み始めたのは、ウイスコンシンの寒い冬を避けるためでした。学生たちに経験を積ませるためもあって、建物は全て自力建設です。短期間に施工できるテントは好都合でした。建設当初は、ライト自身も学生と同じくテントで寝袋生活をしていたそうです。テントは、天候を直に感じます。キャンプ経験のある方はわかりますよね。私も最初こそコヨーテの遠吠えが聞こえたり不安もありましたが、
慣れれば満天の星空を楽しみ、生きていることを実感できるようになります。

 
学生の居住区 テントが転々と広がる。


私のテント、底辺2.4m角。
テラスに石を積み上げただけの暖炉を設け、友人たちとビアパーティをたびたび楽しんだ。

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  『住まいマガジン びお』にて連載中。